書き込みドライブとCD-Rメディア
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はじめに
CD-Rへのコピーは、非可逆圧縮しなければ、よほど元のCDの状態が酷くない限り、(僅かな位置ずれの問題はありますが)デジタル的には同じものができます。*1 それではどうして音質の違いが生じるのでしょうか? 残念ながら、万人に納得できる説明と資料を筆者は持ちません。ただ、書き込まれた状態の違いが音質に影響を与えると考えています。CD-Rの音質を良くしようとするなら、なるべく良い状態で記録することが大事だと思います。
CD-Rにはデジタルデータが刻まれます。しかしながら、実際のピットは道路に空いた穴と本質的になにも変わりません(爆)*2。現実の世界はすべてアナログであり、CD-Rの記録もまたしかりです。デジタルとは演算だけの世界に過ぎません。青島刑事の言葉を借りると、「事件はデジタルじゃなくアナログの世界で起きている」のです(笑)。
プレスマスターから音楽CDを作るわけですが、工場での音質低下は避けられないそうです。webcomsのオフ会で実際に聴かせていただきましたが、音楽CDの音はだいぶなまっていました。プレスマスターを直接CD-Rに焼いたものは、素晴らしかったです。*3
*1 これは確認できます。元のCDとコピーしたCD-Rから同じ曲をPCにWAVEで取り出し、両者を比較します。比較にはefuさんのWaveCompareを使うのが一般的です。頭位置のずれを無視するため、ZEROをスキップします。CD同士を直接比較できないのは、PCでCD-DAを直接には扱えないからです。
*2 実際のピットは石塚氏の「音楽CDの音を良くする方法」をご覧下さい。
*3 これに近い体験はXRCDでできるように思います。筆者の感覚では50%ぐらいマスターに近づいたというところでしょうか(笑)。
ドライブ
2000円ほどで購入できる光学ドライブも登場する昨今、これで品質を求めるのは厳しいものがあります。光学ドライブもすっかり安かろう悪かろうになってしまいましたね。
一般的に古いドライブのほうが優れていると考えます。ただし、ジャンク寸前だったり、修理もできなかったりしますので、注意と覚悟が必要です。インターフェースの問題もあります。SCSIなんて今の若い方は使ったこともないでしょうし、今にP-ATAもそうなっていくと思われます。
1、初期の非MMC CD-Rドライブ(SCSI、1〜4倍速max)
ほとんどが業務用として開発されただけあって、物量が投入され、名機と言われるドライブが多いです。筆者のお気に入り世代。楽器や声の音色が充実しており、空気感などの再現に優れます。しかしながら、サポートしているライティング・ソフトがほとんどなかったり(WinCDRのバージョン6以前がお薦め)で、誰にでも勧められません。国産8倍速以下のメディアが望ましい、と思います。
CDW-900E、CDR100(CDR102)、CDU920S、CDU924S、CDU948S、CD-R55Sなど。
2、SCSI CD-Rドライブ(4〜12倍速max)
CD-Rが一般に普及しはじめた頃のドライブです。筆者の2番目お気に入り世代。MMCドライブなので、対応ソフトは1、の世代より多いです。32倍速メディアまでかな。
PX-R412C、PX-R820T、PX-W1210TS、CD-R58S、CD-R512S、CDR400(CDR200)、など。
3、P-ATA CD-Rドライブ(4〜24倍速max)
上下の世代に挟まれて陰が薄い世代ですが、P-ATAならお薦めです。等速書き込みで使いたいところです。メディアは32倍速メディアまでかな。
MP7040A、CD-W54E、CRX100E、CRX140E、PX-W8342T、PX-W1610TA、など。
4、P-ATA CD-Rドライブ(24〜52倍速max)
あまりな高速化とメディアの品質悪化が顕著になった世代。この世代なら、現行メディアでも心配はほとんどありません。特殊なドライブを除けば、最低書き込み速度は4倍速です。
PX-W4012TA、PX-W4824TA、PX-W5232TA(Premium)、Premium2、CRW-F1、CDW540E、など。
5、P-ATA DVDドライブ
DVDドライブにとってCD-Rはおまけでしかありません。CD-Rを超えた高速モーターのため音が痩せ、DVD機能のため音が濁ります。
最低書き込み速度が16倍速というどうしようもないドライブが増えてきました。最低書き込み速度が4倍速のものを選ぶようにしましょう。
DVR-A05(DVR-105)、DVR-A07(DVR-107)、DVR-A09(DVR-109)、PX-716A、PX-760Aなど。
6、Blu-rayドライブ
DVDドライブよりさらに音が濁って、重苦しいです。
CD-Rメディア
コストダウンが進み過ぎて、いまやCD-Rメディアの品質は壊滅的です。こんな時代に良いメディアは望めませんので、ほどほどのメディアで妥協していくことになるでしょう。また、高速メディアになるほど、使われる色素は高速書き込みと保存性という大きな矛盾を抱えていると思われます。
無難には、まず、太陽誘電が製造している48倍速メディアです。どのブランドで発売されていても、原産国が日本と表示されていたら太陽誘電が製造したメディアです。ただし、最近では、製造後半を中国で行う、半中国製がほとんどになっているようです(これで国産と表示していいのか? 笑)。
次に、台湾製の中で比較的良さそうなメディアです。明確な選択は難しいですが、TDK、MAXELL、MITSUBISHI、など名の通った日本ブランドで発売されているメディアは台湾のそれなりのメーカーがそれなりの管理の元に製造している確率は高いと思います。
各種国産メディアが製造されていたのは、16倍速まででした。この頃に筆者はCD-Rを始めましたが、当時はシアニンを太陽誘電、TDK、Maxell、Fuji、フタロシアニンをRICOH、三井、(アゾを海外で三菱)が製造していました。
24倍速メディアになると、各社とも台湾に製造委託またはOEMとなり、国産は太陽誘電1社のみとなりました。オートメ化が進み、日本からの技術供与もあって、台湾の製造レベルも上がったと言われ、筆者も長いつきあいだった太陽誘電から離れたほどです。その後、32倍速、48〜52倍速、となるにつれ、コストダウンと品質低下が急激に進み、現在に至ります。
ただ、古いメディアを入手したとしても最近のドライブでは上手に焼けないことが多いので、注意が必要です。
市販品より少しでも良いメディアが欲しい方は、森メディアさんを覗いてみて下さい。
測定環境を整えると、メディアを評価しやすくなります。どこの馬の骨ともつかぬメディアが多い昨今では必須だと思います。
2012年9月現在、音楽用メディアや24から32倍速メディアには注意が必要です。○様によれば、スタンパは24から32倍速用のものが使用されているようですが、色素は48倍速以上用のものが使われているそうです。CDレコーダー用に等速書き込みをサポートしなければならず、かといって大量生産となる色素はコスト的にわざわざ専用のものを製造できない、苦肉の策と思われます。昔のメディアとは異なるので、トラブルが懸念されます。
ドライブとメディアの組み合わせ問題
ドライブは内部にライトストラテジーという、メディア毎の書き込み設定を持っています。そのメディア用のストラテジーがない場合、ドライブはメディアの状態を見ながら適切に焼こうとします(ランニングOPC)。
古今東西いろんなメディアがあり、メディアによって適切な焼き方が異なります。ドライブメーカーの腕の見せ所です。ドライブが照準を合わせる標準的なメディアとして、その時代に発売されている各倍速の太陽誘電のメディアが用いられてきました。CD-Rメディアの開発メーカーだからでしょう。
問題は、1つのドライブですべてのメディアに対応できないことです。設定を収容するROMの容量には限りがあるからです。最近は、DVDやBlu-rayの各種メディアに対応しているので、おまけであるCD-Rメディア用にはごく限られた設定しか収容できません。設定の作りこみもそれなりです。現行の太陽誘電48倍速メディアには対応しても、次々と現れる海外製メディアには手が回らない、手を回すつもりもない、というのが実態でしょう。
古いドライブは最近のメディアをうまく焼けず、最近のドライブは古いメディアを上手に焼けない、ことが多いのも同様の理由です。
ライティング・ソフト
・速度
低速で書き込みましょう。メディアとの組み合わせもありますが、そのドライブの最低速度かその近辺がいいと思います。試してご判断下さい。速くてもせいぜいCLV書き込みできるぐらいかと思います。
・バーンプルーフ
インターフェース
電源
質の良くないPC電源の影響を少しでも避けるには、書き込みドライブを外付けにし、別電源を充てるのが望ましいです。容量が十分にあり、ノイズが少ないものが良いということになります。5/12Vとも1Aもあれば低速なら動作しますが、2Aは欲しいところです。以下のような分類?になるかと思いますが、できればディスクリートのリニア電源をお勧めします。
スイッチング電源
・ドライブ外付け用ケース付属の電源
・汎用スイッチング電源
コーセル
デンセイラムダ
Comtecs (Skynet社のホスピタルグレード・スイッチング電源)
など
リニア電源
・市販品
実験用電源(の中古) 菊水電子工業など(新品は高いです)
小出力電源 コーセルのリニアタイプなど
・自作
3端子レギュレーターICを使う自作(きまぐれコンテンツ参照)
ディスクリートのパワー素子を使う自作(きまぐれコンテンツ参照)
電源リンク
・スイッチング電源用ノイズフィルターの自作
しばっぺさんのHP (samplitude info)のTADSIN's CDR Special!!
R.さんのHP (地下2号室)
ケース
電源ほどではありませんが振動対策も効果があります。内蔵より外付けの方が対策しやすいです。簡単に言えば、がっちりどっしりしたベースに取り付けよう、ということです。しかしながら、市販ケースではいかにもやわで役不足に思えます。
コーリアンボードにドライブを底付けしていました。お手軽には合板でも同様な効果を得ることができます。大理石でサンドイッチする方法もあります。コーリアンはキッチンなどに使用され、我々はその廃材を入手するのが一般的です。
コーリアン端材販売 丸一木工所
内部改造
保証付きドライブや貴重なドライブに行うものではありませんが、以下のようなものがあります。
リジッド化
書き込みメカは、振動の影響を受けないようバネやゴムでフローティングされています。これをがっちり固定してしまう改造です。CD-RドライブではTADSINさんがwebcomsのHiFi CD-R Gallery に発表されたのが最初でしょう。腰の据わった、かつ滑らかな音になりますが、外部からの振動に弱くなるので重量で押さえ込むなどの必要があります。
クロック換装
セラロックをクリスタルに。詳しい方法は、R.さんのHP (地下2号室)で
超高精度なクロックを使われる方もいますが、筆者は並品(1個あたり\180)を使い、コンデンサーにDIPマイカを使っています。他にも、電源などいろいろ周辺整備すると違うんでしょうね。ちなみに、924Sのセラロックは発振器ではなく発振子です。33.8688MHzはだいたいのドライブで換装してありますが、もう片方には手がついていないです(^^;;
ドライブ内部黒塗り
その他
コンデンサ換装、電磁波グッズ貼り付け、レゾナンス・チップ貼り付け、などなど
最後に
悲しいながら、CD-Rの旬は過ぎたと云えるでしょう。これから良いものが発売される望みは薄く、過去のものは古くなっていきます。今後、音楽を携帯するための手段として、圧縮音声を再生するプレーヤーが主になっていくのでしょう。CDに馴染めなかったのと同様なことが、低レベルで繰り返されるのでしょうか。
時代に逆らって?CD-Rを続けるのは、ちょっとしんどいような気もします。でも、音楽CDも当分無くならないはずなので、まだ続けていこうと思っています(笑)